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住宅広告市場におけるWeb Ads戦略のABSによる分析(八木沢 2012)

近年、Web利用人口の増加やデバイスの発達に伴い、Webを用いて住宅物件情報を探す人が増えている。また企業の利益を増加させるためのWebマーケティング手法の一つである検索連動型広告は、ユーザの能動的な検索行動に対応して広告が表示されることによる広告効果の高さが認知されている。そのような状況において、住宅広告企業は、住宅物件情報をWeb上にて提供し、顧客の資料請求により利益を得ているため、Web上での広告戦略が重要なものとなっている。そこで本研究では、Web上で行われる検索連動型広告における企業の広告戦略の分析を行った。ABSを用いて分析を行うことで、動的な状況の変化を表現し、企業の広告戦略採択時の迅速な意思決定を支援できることを示す。なお、モデル構築には、社会シミュレーション言語SOARSを利用しています。

2012年度 工学修士 八木沢 一穂

研究詳細

背景

 インターネットが広く普及している現在、人々の住宅探しに変化が見られる。以前は、その土地その土地の不動産会社を訪ね、住宅物件を探すことが主流であったが、インターネットやメールを用いて物件を探す人が多くなっている。

このような人々に住宅物件を提供する、SuumoやHomes等に代表されるような、住宅物件情報ポータルサイトがある。これらのサイトは、不動産会社のもつ物件情報をサイト内に掲載し、顧客がサイトを通し、それら物件の資料請求を行った際に利益が生じる。そのため、住宅情報ポータルサイトにとって、住宅物件を探している顧客を自身のサイトへ誘導することが重要になる。

検索連動型広告

検索連動型広告とは,広告主が登録したキーワードをユーザが検索サイトにて検索した際に,ユーザの検索結果画面の上部や側部などに広告が表示される仕組みのもので,Webマーケティング手法の1つである.検索連動型広告は,ユーザの能動的な検索行動の結果として広告が表示されるため,クリックされやすく,興味関心の強い見込み客をサイトに訪問させるための有効な方法として認知されている.

検索連動型広告では,広告が表示されただけでは課金されず,ユーザが広告をクリックした時点ではじめてコストが発生する「クリック課金」が採用されている.広告主は,1日当りの広告費用の予算を決めてそのなかで運用することができ,予算のコントロールが可能である.参入にかかるコストは,無料,または低額で,1クリック数円から広告掲載を開始できる.そのため,広告掲載を開始するためのハードルが低く,他広告主との競争が起きやすい.広告の掲載順位は,キーワードの入札金額などによって順位がリアルタイムに変動する.

本研究の役割

検索連動型広告において,広告主にとって出稿対象となるキーワードが多く存在しており,どのキーワードに対して,どれだけコストを掛けるかという問題がある.検索連動型広告に関するこれまでの研究では,草野らは,過去の入札履歴を分析することで,キーワード集合Kに含まれる,任意のキーワードkiに対する,1日に期待されるコンバージョン数およびコストが,入札金額biの関数として推定できている時の,コスト制約や費用対効果制約下での入札額最適解が得られることを示している.この研究においては,1日に期待されるコンバージョン数とコストの関数が一意に決定されているが,実際には,検索連動型広告市場には競合となる広告主が存在し,彼らのコスト分配(広告戦略)により,1日に期待できるコンバージョン数およびコストの関数も変化することが考えられる.そこで本研究では,ユーザのWeb上での実際の行動履歴情報からユーザの行動モデルを構築することで,自身が広告戦略を変更した時に加え,競合となる他広告主が広告戦略を変更した際の,効果分析が可能であるシステムの構築を目指す.この構築するシステムには,シミュレーションモデルを用いることで,自身,他広告主の広告戦略を任意に設定することができ,様々なシナリオで分析を行うことが可能となる.

モデル

住宅サイトと,ユーザ,検索サイトの3者関係と,ユーザの検索時に用いるキーワードをモデル化する.住宅サイトは,検索サイトに対して,検索連動型広告における広告戦略をキーワードに対するクリック単価を決定する形で選択する.検索サイトは,住宅サイトによる広告戦略が反映された広告リストを検索されたキーワードに応じてユーザに提供する.ユーザが表示された広告をクリックした際に,広告がクリックされた住宅サイトに対しての広告出稿コストが発生する.ユーザは,住宅情報を収集するにあたって自身の検索するキーワードを決定し,検索サイトから住宅サイトの広告の表示を受け,住宅サイトを訪問する.また,ユーザが訪問先の住宅サイトで資料請求を行った際に,資料請求の対象となった物件情報を保有する不動産会社から住宅サイトへの金銭の移動が生じる.

まとめ

研究では,住宅サイトと検索サイト,ユーザの3者関係のモデル化を行った.また,住宅情報ポータルサイトを訪れたユーザのデータを用いて,検索に用いられるキーワードのモデル化,ユーザの検索行動モデルのパラメータ設定を行い,検索連動型広告市場をシミュレーションモデルで再現した.シミュレーションモデルに,想定したベースとなる状況を設定し,そこへ複数の住宅サイトの広告戦略を導入して,競合となる他広告主の広告戦略変更の自社への影響を分析した.その結果,想定したような広告予算が大きい広告主は,効果が高いキーワードの広告掲載順位を1つ奪われることは,あまり大きな影響にならないが,複数のキーワードに対する最上位の広告掲載順位を奪われることは大きな影響に繋がる事を示唆した結果が得られた.

今後の展望と課題

検索連動型広告の広告掲載順位はリアルタイムオークション方式により決定されるため,企業は自身の設定するクリック単価を動的に変化させることが出来る.また、その結果として、それぞれの企業の広告掲載順位は動的に変化する。動的なクリック単価の変化や広告戦略の変更による広告掲載順位の入れ替わりをシナリオ分析に組み込むことで,より複雑な現象を分析することが可能となる.また,広告掲載にかかるコストを加味し,CPAを分析の指標に取り入れることや,住宅サイトの広告出稿に,予算制約をかけることで,より実践的な分析が可能となると考えられる.

今後の展望としては,本シミュレーションモデルの企業のマーケティング担当者へのゲーミングシミュレーションへの応用が考えられる.複数のマーケティング担当者等がプレイヤーとし,プレイヤー同士が仮想の検索連動型広告市場において競争を行うという形での,教育的ツールとして用いることも可能であると考えられる.

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